デモシーンのことをあれこれ調べていると、どこに行っても出くわす名前というのがあります。シーンで積極的に活動している人、シーンを支援している人、デモシーナーが活躍するための場所(そしてファンがキャーキャー言える場所)を提供している人、、、。「あら、また会いましたね!」と心の中で声をかけつつ、おそらくこの人達がいなかったら、デモシーンはあっという間に過去形になってしまうのだろうなぁと思ったりしています。お世話になっております・・・。
インタビューでは、効率的でハッピーな創作時間(と人生、、)を送るための秘訣や、なぜ20年以上もデモシーンに関わることになったのかという理由も教えて頂きました。さらに、最近聞いているオススメ音楽や自宅のスタジオスペースも公開!(何かちょっとサンレコっぽい!かっこいい!笑)
そんなわけで、お待たせいたしました! ぜひお楽しみください、、。
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デモシーンでは本当にいろいろなことをされていますよね。すべてリストアップするのは難しいような気もするんですが、、まずは簡単に自己紹介をお願いできますか?
褒め言葉だと解釈しますね(笑) 僕はベント・スタムネス(Bent Stamnes)です。80年代後半からデモシーンに参加していますが、近頃はデモグループのExcessやDead Romanの音楽とディレクション担当として知られているんじゃないかと思います。まぁ、今のデモシーンは自由な気風になっていてグループはあまり関係ないんですけどね。僕もいろいろな人達やグループと作業していますし、他の人と作業するとデモ制作への新しいアプローチのヒントが得られるのでいつもとても勉強になります。できるだけたくさんの人とコラボレーションしたいですね。
どこかで読んだのですが、最初に使ったコンピューターはコモドール16だったそうですね!コンピューターとの出会いと、最初の印象について教えてください。(覚えていますか?)
そうです、最初のコンピューターはコモドール16でした。コモドール64(C64)の安いバージョンですね。いとこがC64に乗り換えた時に、使っていたものをプレゼントしてくれたんです。キーの感触も気に入ってましたし、タイピングすると当時使っていた携帯用テレビの白黒の小さな画面にグラフィックが出るところも大好きでした。ゲームは数本しか持ってなかったんですが、友達のC64のゲームをコピーしてC16で動くか試したりはしてましたね。実際、いくつか動いたものもあったんですよ(笑)
賢い子ですねぇ(笑) では、デモシーンとはいつ出会ったのでしょう?
コモドールを使っていた時にも何となくクラッキングシーンの存在には気が付いていたんですが、本当に興味を持つようになったのは、PCを使い始めてからです。その頃は大体(コモドールから)Amigaに移行する人が多かったので少し変わっているのかもしれませんけど、僕はC16/64からいきなりPCに移ったんです。僕の周りではみんなそうでしたね。Amigaはグラフィックも音楽も格好良いし、持ってる友達がいつも羨ましかった… だからこそ最初にすごいPCデモが出てきたときは感動しましたね。
最初に見たデモを覚えていますか?デモを見たあと、自分でも作ってみようと思いましたか?
何度も繰り返して見た最初の作品は、ParanoidsのBBSのインビテーション(「No Lamers Allowed」)、DCEの「Dragnet」、UltraForceのデモ(特に「Suzanne Vega」と「Vectordemo」)、Future Crewの「Yo!」、Capacalaとか別のグループのクリスマスのデモですね。あとは、自分でDeluxe Paintを使ってイメージを作ったり、Covoxとか、当時のトラッカーでひどい音楽を作ったりもしましたね。で、それをTHG Intro Makerで合わせて、どうしようもないようなデモを作ったりしてました。デモの作品は何度見ても飽きなくて、特にクリスマスのデモ(大概は音楽ディスク)は、何百回でも聞いていられました(ゲームで遊びたかった弟や近所の子にとっては迷惑だったでしょうけど…)。初めて自分で作った“音楽”は、beepコマンドのバッチファイルです。今でもまだどこかにあると思います(笑)
横にいた弟さんと近所の子の表情が簡単に想像できるような、、(笑) では、デモパーティーに初めて参加したのはいつだったのでしょう?
最初に参加した大きなパーティーは、1993年のThe Party 93です。本当に人生が変わるような体験でした。ノルウェーのいくつかのグループで企画したバス旅行だったんですが、最高でしたね。デモシーンに夢中になったのはそれからです。
初めてデモを作った時はどんな感じでしたか?大変でしたか?
初めて作ったデモの作品は、MAD(Microchips After Dark)というグループで出した「ZAP!」です(注:The Gathering 1994でリリース、結果のページのグループ名は誤植とか)。厳密に言えば、これは100KBのイントロだったんですが、そこまでサイズを減らせなかったのでデモとして出しました。Deluxe Paintで作った絵やフラットシェーディングの立方体、それと音楽も入っていましたね。でも、僕がやったことと言えば、グループのメンバーを集めること(それぞれ別のスキルを持った友達を集めました)と、長さに合うようモジュールを編集すること、そしてクラッシュしないようにパーティー会場でグラフィックを調整したことぐらいです。本当にひどい出来栄えでしたけどね。(音楽だけが再生されて、フレームどころか何とも同期していない状態になったり、、。つまり、自分のコンピューターでしか設計通りに動かないということです。) でも、楽しい経験でした。これで他のグループに興味を持ってもらえましたし、知り合いになったり、一緒に作業するきっかけになったんです。
制作プロセスについてお聞きしたいのですが、あなたはミュージシャンとしての活動が目立ちますが、Excessではミュージシャンだけでなくグラフィックアーティスト(デザイナー)としてもクレジットが入っていますね。これはどんな作業になるのでしょう?まず音楽を作ってからそれに合ったグラフィックを作るのですか?コーダーはどの段階から参加するのでしょう?
これは、誰と作業するかによって異なります。ExcessやDead Romanの場合は、プロセスがある程度決まっていて、コーダーがエフェクトやシーンのアイデアを持ち込んで、僕はそれとはまったく関係ないところで音楽を作るというやり方になっています。この方法だといつも音楽が最初に完成するんですが、ビジュアルの動きをかなり自由に調節できるので気に入っています。僕自身はコードを書きませんが、“デキるコーダー”と作業をしているので、大体いつも素晴らしいものに仕上がっていますね。
作業にはGNU Rocketというツールを使うのが好きです。見た目は普通のマルチトラッカーなんですが、デモとは別のウィンドウで開きます。僕は大体モニターを2つ使うので、1つはレンダリング用、もう1つをこのトラッカー用にして、フルスクリーン表示にしていますね。トラッカーには、デモエンジンの中でコントロールできるエフェクトのインスタンスの列があって、たとえば「パーツ」という名前の列があったとしたら、これを00から01に変えることでシーンを変更できます。あと、「カメラ」だったらアクティブカメラを変更できますし、他にも「スクリーンシェーディング」とか、「オブジェクトの回転」、「ブラー」といった、いろいろな名前の列が入っています。このツールとメソッドを使うことで、デモを成功に導いたり、ダメにしたりするものを実装できるんです。スパイスや香辛料といった、“ちょっとしたもの”と言ってもいいですね。短いフラッシュとかカメラの傾きとか、あとは音楽の要素に関連したものだったりします。誰も気付かないかもしれませんけど、感覚的なものはあるんです。この作業を入れた場合、AからBに変える以上の効果が出ることが多いです。「Spheres on a plane」とか「Regus Ademordna」(ビデオ)なんかは、その良い例ですね。完成度を上げるために、細かいものがたくさん入っています。
この方法で作業すると、本当に速く作品がまとまるんです。他の人の場合は分かりませんが、少なくとも僕にとっては効果的です。このトラッカーの横列は曲のBPMともリンクしているので、何をどこに配置すればいいのかも簡単に分かります。少し変わっているかもしれませんが、とても良い方法ですよ。実際に試してみると分かります。GNU Rocketはオープンソースで、Flashのデモから4kイントロまでいろいろなデモで使われています。Githubにありますから是非どうぞ(笑)デモを作ることに関しては、僕は“とにかくやってみる派”なんです。万能のエンジンを作るのに何年も費やしてみたところで、作品は何もできませんから。何も作らないよりは、そこそこの作品を4つ作るほうがいいと思っているんです。今はメガデモの時代ではないので、生産性を上げるには小さめのプロジェク”にすることが大切です。
なるほど。では、音楽だけをグループやプロジェクトに提供する場合はどうですか?アイデアを出したり、制作/レビューのプロセスに関わることはあるのでしょうか?それとも、“好きにやってくれ”という感じなのでしょうか。
これはまちまちです。進捗を共有したり方向性を話し合ったりするのが好きな人もいれば、音楽を少し調整してほしいというリクエストを受けることもあります。こういうのは楽しいですね。あとは音楽だけ渡して、リリースされた時に初めて作品を見るということもあります(制作がキャンセルになることも時々あるので、作品を一度も見ない場合もあります)。でも、これはこれでいいんです。ただ、あえて選ぶとすれば、やり取りを重ねながら作る方法ですかね。プロセスに参加できるので、一番やりがいを感じます。でも、どんな風になるのか全く知らずに音楽だけ提供した場合でも、素晴らしいデモに仕上がっていることが多いです。一概にどれが良いとはいえませんが、自分が好きな人たちと一緒に作業するのが最善の方法だと思いますね。たとえ作品の出来があまり良くなかったとしても、楽しんで作れますから。
面白いですね…。そういえば、先ほど“スパイス”とか“香辛料”という言葉を使われていたので思い出したのですが、Gloomさんはよくお料理をされるんですよね?(Twitterで見ました…) お料理をされる時は、レシピ通りに作りますか?それとも思いつきで作りますか?
何を作るかにもよりますね。初めて作る料理だったら、まずはレシピに忠実に作ってみて、その料理の“基準”を確認します。こうすれば、また次に同じものを作る時に、材料を足したり減らしたり、場合によっては何か別のものを使ったりできますからね。僕は少し分子ガストロノミーにも手を出しているんですが、この分野では指示通りの材料と分量を使うことがものすごく重要になってきます。でも、作り慣れている料理だったら、毎回好きなようにアレンジしていますね。基本が確立しているので、いろんなバリエーションを作ってみるんです。少し気取ってる感じに聞こえるかもしれませんけど、すごく楽しいですよ。料理をするのは大好きですね。
分子ガストロノミー!? で、では、驚いたところで音楽制作の話に戻りましょうか…(笑) 作曲というプロセスは私にとってかなり謎の多いものに思えるんですが、どのように音楽を作っているのでしょう?ジャンルとか、雰囲気とか、BPMとか、、“今回はこんな感じでいこう”と決めてから作り始めるのですか?
これは難しい質問ですね。自分の気分やプロジェクトにもよるんですが、コーダーから好きな曲のリストをもらって、特定のスタイルの曲(ダブステップとか)をリクエストされることもあります。そんな時は、そのリクエストに応えられるように音楽を作ります。それ以外の場合は、何となくスタートして、自分が納得できるものを作ります。他のミュージシャンのやり方は分かりませんが、僕には音楽を作る時のルールがあるんです。それは、“20分作業を続けても良くならなかったら、捨てて最初からやり直す”というものです。何年も前は、うまくいかないとただ行き詰まって惨めな気持ちになることが多かったんですが、今は子どもが2人いますし、フルタイムの仕事もあるので、作曲にそれほど時間をかけられないんです。だから、スクリーンにあるものを良くないと認めて、やり直すのが最善策ですね。このルールのおかげで何度も救われました。
ジャンルやスタイルの面では、僕の好みはかなりエレクトロニック(ミュージック)に偏っていて、中でも特にビックビートとかブレイクビーツとか、個性的なベースラインがあるものが好きです。だから、自分でもそういった曲を作っていますね。
時々ですが、インスピレーションとして作業中のデモのイメージやスクリーンショットを使うこともあります。グリーンのグラデーションだったり、シャドウだったりとちょっとしたものではあるんですが、そのビジュアルが音楽にフィットするようなものを考えるようにしています。でも、ほとんどの場合、特定のサウンドを目指していますね。音楽のテンポやBPMは、デモのタイプによって決まるものなんです。動きの速いイメージが入ったデモなら速いテンポの音楽が必要になりますし、ゆっくりしたテンポのものなら別のアプローチが必要になります。もし僕がデモを作る人たちにアドバイスできることがあるとしたら、「スピードを落とせ」と言いたいですね。175 BPMのドラムンベースの曲を使いたいと思ったら、ものすごい量のビジュアルが必要になります。そうでないと、退屈な作品になってしまうんです。だから、迷ったらスピードを落とす。人生に対するアドバイスでもありますね(笑)
ありがとうございます。そのアドバイスを胸に刻んでおきたいと思います(笑) ところで、外出中に曲のアイデアが思いついた場合、電話に向かって歌うことはありますか?
いや、それはないですね(笑) ただ、コードシーケンスを電話のメモ帳アプリに残しておくことはあります。あとは、どこかで聞いて、あとでチェックしたい曲のタイトルをメモすることもありますね。
メロディアスだったり、ビートの嵐だったりと、あなたの作る音楽は1つのジャンルにとどまりませんね。このインスピレーションはどこから得ているのでしょう?
本当につまらない答えになるんですが、その時に聞いているものに大きな影響を受けていますね。あまりにもありがちな話なんですが、本当のことなので仕方がないです、、。たとえば、Fairlightの「Apocalypse When」 (ビデオ)の音楽を作っているときは、何週間も「I Am Legion」(アルバム)をリピートでかけていました。
ご自分で作曲するだけでなく、過去にはデモシーンの音楽のプレイリストを紹介されていましたよね(BitJam (#85のことです)。デモシーンの音楽は日常的にもよく聞きますか?最近聞いているものを教えてください。
僕の場合、デモシーンの音楽は聞かないですね。と言うのも、そういう音楽は存在しないんじゃないかと思うんです。昔はデモのサントラをテープに録音してウォークマンで何時間も聞いたりしていましたけど(「Crystal Dream II」とか)、今はデモ用に音楽を作っても、それとは別にオンラインで公開する時代ですから。デモのサントラを作る人たちの音楽はプレイリストに入っていますが、大体いつも“ふつうの音楽”(そういうものがあるとすれば、ですが)を聞いていますね。ただ、これは偶然なんですが、最近の作業中はMosaikの新しいアルバムをリピートにして聞いています。すごく良いんですよ。それ以外だと、最近はDeadmau5、The M Machine、Cloudkicker、Noisia、Mat Zoとか、いろいろと聞いています。僕は1日の間で音楽の好みが変わるので、朝は速いリズムのハードなものを聞いていても、仕事が終わる頃にはジャズ(Mats Eilertsenがお気に入りです)を聞いていたりしますね。
ちょっとメモさせてくださいね…(笑) 過去にあなたにヒントを与えたり、音楽との付き合い方を変えるきっかけとなった曲やアルバムはありましたか?
たくさんありますよ。何かを聞いていて、頭の上で電球がピカっと光るというか、“あぁ、スネアのリバーブだけにサイドチェインを使うのか!よし、試してみよう!”っていう感じで、何かを学んだ瞬間っていうのもありますし、Deadmau5やBT、Cloudkickerを聞いていて、バックで使われている要素のいろんな拍子記号を追いかけてみることもありますね。そこから、スタイルやアイデアにつながっていくんです。
今でも覚えているんですが、僕が11歳の時、ピアノかキーボードを弾きながら作曲のまねごとをしていたことがあったんです。その時、“自分が大人になるまでに、世界中の音楽は作曲され尽くしてしまう!”と思って、ものすごく腹が立ったことがありましたね。まぁ、物事はどんどん変わっていきますし、音楽が作られ尽くすなんてことはないので、今思えばバカな考えなんですけど、そう感じていた時もあったんです。今でも「何だこれ、すげぇな!」って思うものを聞くと時々そう感じますけど、腹を立てたり落ち込んだりするんじゃなくて、そこからインスピレーションを得るようにしています。
将来タイムマシンが発明されたら、11歳のGloom君にあなたの作った曲を聞かせてあげますね(笑) さて、先ほど“20分作業してダメだったら最初から作り直す”とお話しされていましたが、この他にもデモや音楽を作る時に気を付けていることはありますか?
そうですね、、デモの作品用に音楽を作る時は、自分の気に入らないものは送らないようにしています。過去には締め切りとかの関係で送ってしまったこともあるんですが、大抵は気に入った作品を送っていますし、そこを最重要視しています。目標やルールは作品ごとに変わるので、どんな作品にも共通のルールやガイドラインを見つけるのは難しいんですが、“出来上がりに満足できるかどうか”っていうのが指標になるんじゃないかと思います。
音楽の作品として作る時は、かなり自分に厳しくしているので、それほど頻繁にはリリースしません。ビジュアルがない場合、音楽はそれだけで個性を主張するものでなければなりません。つまり、高い基準を満たしている必要があるんです、、、このあたりが僕がEPを出せないでいる理由ですね。ここ半年ぐらい取り組んでいるんですが、どう思おうと今年(2013年)のクリスマス前にはリリースしようと思っています。これも自分に課したルールの1つですね。
Update (Feb 14, 2014) このEPが先日リリースされました!試聴と購入はこちらから。
楽しみですね!ところで、1曲だけリリースするのと、EPやアルバムとしてリリースするのに何か違いはあるものなんでしょうか?
まったく違います。ミキシングやマスタリングのプロセスが面倒になるだけじゃなくて、プレイリスト全体での構成が必要になるんです。DJのセットリストを作るのにも少し似ていますね。全体を通して聞いた時に、ある程度の“ダイナミックさ”とか、“高揚感”みたいのが感じられないといけないんです。今はアルバムを通して聞く人は少ないみたいですけど(それがトレンドみたいですね)、それでも、連続して聞いた時に筋が通っているようにしたいんです。
つまり、曲がうまくそろったとしても、アルバムの中盤に曲の種類とか、テンポとか、エネルギーが欠けているなと思ったら、アルバム全体のまとまりを出すためだけに、まったく新しい曲を作ります。実際、そういうことが今製作中のEPでも2回ありましたね。でも、良い作品にするための作業ですし、最終的にはこういった手間が功を奏する結果になるんじゃないかと思っています。まぁ、時間はかかりますけどね…。1曲だけリリースする場合はもっとシンプルなプロセスなんですが、アルバムとなると、いろいろと違ってくるので。
そうなんですか!私もアルバムの流れを楽しむ古いタイプの人間なので、より一層楽しみです(笑) では、作曲にはどんなプログラムを使っていますか?実際の楽器を使うことはありますか?
メロディーはピアノで作曲しています。ハードウェアシンセもいろいろと使っていますが、コンピューター上で作業することがほとんどですね。あと、ときどき義兄がギターを持って遊びに来るので、それを録音して使ったりもします。 DAW(作曲ソフトウェア)は、Reaperというソフトを使っています。速くて安定していて、操作にも慣れているので気に入っています。でも好みやメリットは人それぞれだと思うので、特にこれといったソフトをお勧めすることはできないですね。自分に合ったものを使えばいいと思います。
あなたの音楽やグラフィックが生まれる現場を見せていただけませんか…?必ず夜中に作業するとか、お茶を飲むとか、作業するときの“こだわり”みたいなものはありますか?作曲する時には静かな場所でないといけないのでしょうか?
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photo by Gloom |
夕方か夜の時間に作業することが多いです。集中力を必要とするので、気を散らすものがないほうがいいんです。
お茶は飲みますけど、音楽を作っている時に何か食べたり飲んだりすることはほとんどないですね。スクリーンとキーボード、それにシンセがあるだけです。
では定番の質問にいきます。好きなデモ、心に残るデモ、影響を受けたデモ、、または人生を変えたデモ… あなたにとって特別なデモを教えてください。
あまりにも選択肢が多すぎて、お気に入りを選ぶのは不可能ですね。印象深いデモ作品は本当にたくさんあります。ただ、自分の“デモシーナーとしての人生に直接的な影響を与えたもの”とか、“デモシーンにのめり込むきっかけとなった作品”ということで絞るとすれば、「Second Reality」(ビデオ)になるでしょうね。もちろん、この作品以前にも以降にも素晴らしいものはたくさんありましたけど、あれほどまで完璧な方法でまとめられた作品が出たことで、当時のデモに対する見方が大きく変わったんです。だから、僕にとっての青春のデモは、「Second Reality」ですね。
あなたは現役のデモシーナーとして作品を継続的にリリースする他にも、デモパーティーを開催したり、デモシーンの知識を共有できる場所(Diplayhackなど)を提供したりしていますね。どうしてこういった活動をするのですか?
僕がオーガナイズしているSolskogenというパーティーの場合は、必要に迫られて始めたものなんです。2000年の初め頃、シーンで仲良くしている友達数人と話していて、ノルウェーで最大規模のデモパーティー(The Gathering)があまり面白くない方向に向かっていると意見が一致したんです。ゲーマーが多すぎて、クリエイティブなことに重点が置かれなくなっていたんですね。それで、2002年のScene Event(デンマークのデモパーティー)に参加した後、“夏にデモシーンだけの小規模なイベントができれば理想的だろう”ということになって、それでスタートしました。今ではノルウェー国内で最大、そして最高(自分の中では)のデモシーンイベントになっていますし、北欧で行われている他のデモシーンイベントの規模に近づきつつあるんです。すごくやりがいを感じますね。それで、この“やりがい”というのが決め手だと思うんです。Solskogenが毎年開催できるのは、素晴らしい人たちがいるおかげですし、それがパーティーにもよく表れていると思います。ステージに上がって参加者を出迎える瞬間とか、シーンの友達とデモや音楽を楽しんでいる姿を見ると、やって良かったなと感じますね。
Displayhackに関しては、まだサイトの目的が定まっていないというのが本音です。はっきりとしたアイデアがあって始めたものなんですが、だんだん管理が難しくなってきたんです。なので、最近は新しい取り組みとして、Curioというのを始めました。このサイトでは、「見ておくべきデモ作品」を、大きなスクリーンショットと埋め込みの動画で紹介しています。DisplayhackもCurioも、Gargajと一緒に立ち上げました。もはやデモシーンにおける僕の連れ合いですね(笑) 何かシーンに関連することを思い付くと、実行可能なアイデアかどうか、まず最初にGargajに相談するんですよ。それから、Scene.orgにも関わっています。来年には少し手を入れて、新しいサイトやアーカイブのフロントエンドなんかにする予定です。Scene.orgは来年の3月にアメリカのサンノゼで行われるNVScene 2014のオーガナイザーでもあるんですよ。今からすごく楽しみにしていますね。それでもまだ質問が“どうして?”ということであれば、“どうしても”と答えるしかないですね。デモシーンは僕に多くのものを与えてくれましたし、これからも続いていって欲しいんです。少数ですが今でもシーンの存続に力を注いでいる人たちがいて、彼らが活動をやめてしまったらシーン自体も止まってしまうんです。だから、、“どうしても”なんです。
では、あなたにとってのデモ、デモシーンとは何ですか?デモシーンと出会ったことで人生が変わりましたか?
確実に僕の人生を変えましたね。ネットワークを築くこともできたし、面白い人たちと出会って、いろんなことを学ぶこともできました。だから、デモシーンの人たちやイベントには本当に感謝していますね。具体的にデモシーンが何かという説明はできませんけど、僕はもう20年以上デモシーンと関わっていて、これだけ長い間続けているのには、それなりの理由があるんです。
もしもお子さんが“デモシーンってなに?”と尋ねてきたら、どんな風に説明しますか?それと、もし“参加したい!”と言い出したらどうしますか、、応援しますか?それとも全力で止めますか?
そうですねぇ(笑) 長女が今5歳なんですけど、彼女のお気に入りのデモは「Catzilla」ですね。“こわいネコ”と呼んでいて、いつも何度も見たがります。もちろんデモシーンが何のことかは理解していませんけど、“毎年夏になると、パパは人がたくさんいて、大きい音で音楽が鳴っている場所に出かける”ということは分かってるみたいです(大体は土曜日の午後の数時間だけですが、娘も毎年Solskogenには参加しています)。でも、今のところiPadで遊んだり、僕と一緒に小さなArduinoキット(LEDやピーッとなるスピーカー、回転ボタンなどが入っています)で遊んだりするほうが好きみたいです。もう少し大きくなって、デモシーンに興味を持つようになったら、喜んでいろいろと教えてあげたいと思いますね。
ものすごく前途有望に聞こえますね(笑) では、今後はどんな作品を作っていきたいと思いますか?デモシーンでやってみたい夢や目標はありますか?
デモシーナーとしてやりたかったことは、一通りやった気がしています。才能のあるスゴイ人たちと作業するとか、新しいことに挑戦するとか、、。だから、今後も続けていければいいなと思いますね。特に決まった目標はなくて、ただ作り続けていければいいです。音楽制作の面では、いつかフルアルバムを作りたいなと思っています。
それでは最後にデモシーナー、デモファンの方にメッセージをお願いします。
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EP制作の真っ最中だったにもかかわらず、快くインタビューに答えていただきありがとうございました!(写真も!)
Gloomさんのブログでは、音楽やデモシーンに関する記事のほか、最新のリリース情報なんかも紹介されています。(「今年のデモシーン」みたいな統計も出していて面白いです。) それと、インタビュー中にも出てきますが、Gloomさんがサイトを運営しているDisplayhackやCurioも、チェックしてみてくださいね。個人的にはCurioは、技術に詳しくないデモシーンファンにとって完璧♡だと思っております(笑) (ボタン1つでオススメデモが見られるー) それから、デモに使われている音楽が好きな方には、Gloomさんも過去にDJを務めたBitJamのPodcastもどうぞ。 (しかし本当にいろんなことをされてますよねぇ、、)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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そもそも“デモ”ってなに?パソコンの話?と思った方は、まずはこちらのMoleman2のドキュメンタリーをチェック。(この映画の監督、シラードさんのインタビューはこちらでどうぞ。)
#1: 日本のデモシーナー、qさん(nonoil、gorakubuのコーダー)にインタビューは、こちら。
#2: デモシーナー、Gargajさん(Conspiracy、Ümlaüt Design)にインタビューは、こちら。
#3: デモシーナー、Preacherさん(Brainstorm、Traction)にインタビューは、こちら。
#4: デモシーナー、Zavieさん(Ctrl-Alt-Test)にインタビューは、こちら。
#5: デモシーナー、Smashさん(Fairlight)にインタビューは、こちら。
#6: デモシーナー、Gloomさん(Excess、Dead Roman)にインタビューは、こちら。
#7: 日本のデモシーナー、kiokuさん(System K)にインタビューは、こちら。
#8: デモシーナー、kbさん(Farbrausch)にインタビューは、こちら。
#9: デモシーナー、iqさん(RGBA)にインタビューは、こちら。
#10: デモシーナー、Navisさん(Andromeda Software Development)にインタビューは、こちら。
#11: デモシーナー、Pixturさん(Still, LKCC)にインタビューは、こちら。
#12: デモシーナー、Crypticさん(Approximate)にインタビューは、こちら。
#13: 日本のデモシーナー、0x4015(よっしんさん)にインタビューは、こちら。
#14: デモシーナー、Flopine(Cookie Collective)にインタビューは、こちら。
#15:デモシーナー、nobyさん(Epoch、Prismbeings)にインタビューはこちら。
私がデモシーンに興味を持った理由、インタビューを始めた理由は、こちらの記事にまとめてあります。また、デモやデモシーンに関連する投稿はこちらからどうぞ。