デモシーナー、Flopineさん(Cookie Collective)にインタビュー
「デモシーナーにインタビュー」へようこそ。今回は、さまざまな方法を活用してシェーダーの作品を積極的に発表している、コーダーのFlopine(フロピン)さんをゲストにお迎えしました。彼女はRevision 2020のShader Showdownの優勝者でもあります。
ご存じない方のために簡単に説明しますと、「Shader Showdown(シェーダー・ショーダウン)」とは、勝ち抜き方式で行われるシェーダーのプログラミングトーナメントのこと。出場者はDJとMCが待つステージに上がり、観客の前で指定時間内にライブでコーディングを行います。2013年にポーランドのデモパーティー、WeCanで初開催されて以来、世界各地のデモパーティーで続々と導入されている部門です。ちなみに、Revision(リビジョン)とは、ドイツで毎年開催される世界最大のデモパーティーのことです。
では、さっきから頻出の「シェーダー」とは何なのか?この説明は、、Flopineさんにお任せしたいと思います! インタビューでは、かなり賑やかなステージでコードを書く時の感覚について、デモシーンとシェーダーコーディングとの出会い、なぜ「ライブであること」が重要なのかなどを語っていただきました。
勝利のヒントもつまった、インスピレーションを与えてくれる彼女の言葉をどうぞお楽しみください!
注:デモシーンって何?と思った方は、まずはこちらのページからどうぞ。そしてデモのドキュメンタリーをチェック。
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まずは簡単に自己紹介をお願いできますか?
photo by Gloria Marillier |
こんにちは、Flopineです。シェーダーアーティストでCookie Collectiveチームのコーダーです。それからデジタルアートの博士課程の学生でもあり、コードを使ったアート制作とデモシーンのコミュニティに関する論文を書いています。
それから、Flopineさんは2020年のRevisionのShader Showdown(シェーダートーナメントのこと)の優勝者でもありますよね。遅ればせながら、おめでとうございます。振り返ってみて、どんな感想をお持ちですか?やはり敵は手強かったですか?
Revisionのシェーダートーナメントはいつも本当に難しいんです。参加者はみんなライブコーディングの上級者なので、バトルは毎回おもしろい展開になりますね。出場者の組み合わせは、デモパーティーで開催されるほぼすべてのトーナメントを仕切っているhavocさんが慎重に考えてくれてるんですよ。
対戦中に完成した作品の仕上がりに満足していますか?
いつも準々決勝と準決勝で作った作品には満足してるんですが、決勝戦での自分のパフォーマンスに満足したことはないですね。いつもそんな感じだったので、1位という結果にはとても驚きました。投票ポイント数で見ると、2位のwwrighterと大接戦だったんです。
話を先に進める前に、ちょっと基本的な質問をしてもいいですか…? さっきから「シェーダー」という言葉が頻繁に登場していますが、これは一体何なのでしょう…。
シェーダーとはGPU上で実行されるプログラムで、スクリーンに表示される画像をレンダリングする方法を表すものです。レンダリングプロセスのステップごとに違った種類のシェーダーがあるんですが、シェーダートーナメントでは通常、フラグメントシェーダー(またはピクセルシェーダー)を書いています。フラグメントシェーダーはスタックの最後のプロセスに該当するもので、3D座標のラスタライズの後の処理になります。基本的には、ピクセルの位置を入力して、各ピクセルの色を出力します。
それで、、このプログラムには独立したコンポやトーナメント戦を開くだけの魅力があるのですか?「ショーダウン」とか「ライブコーディング」とか、さまざまな名称で呼ばれているようですが、何にせよデモシーンではかなり新しいカテゴリーだと思うのですが、、。
ライブコーディングが1つのコンポとして独立した理由については考えたことがなかったんですが、いい質問ですね!ステージの上でDJのミックスを聴きながらライブで4Kデモを作るような感じなので、最高のアイデアじゃないかと思うんですけど、、。それに、実際やってみると本当に最高なんです。私は5行のシェーダーのコードで感動的なエフェクトを生み出すことは可能だと考えていて、そこにはショーとして見せられる要素がかなり含まれていると思うんですよね。たぶん、トーナメントを初めて開催したデモシーナーはそういった点に目を付けたのだと思います。それに、こういうトーナメントって過酷なんです。記憶力も技術力も必要になりますし、プレッシャーの中でコードを書いたり、その場で独創性を発揮したりすることが求められます。ライブコーディングのコンポが始まったことで、こうしたスキルがコミュニティに評価されるようになったのは間違いないですね。
Revision 2020 Shader Showdown
そうそう、あの環境でのコーディングについて聞いてみたいと思ってたんです!2020年のRevisionはパンデミックの影響でオンラインイベントになりましたが、それ以前にFlopineさんがステージでコードを書いている姿を拝見してました。対戦相手がいて、DJがいて、対戦の様子を実況中継するMCのような人がいて、ステージの前にはすごい数の観客がいるわけですよね。プログラムを書くにはあまりにもハードな状況なんじゃないかと思うんですが、実際はどうなんでしょう。緊張しますか?
プログラムを書く環境としては間違いなく過酷です!でも、Revisionのステージは広いので、対戦相手と少し距離が離れているんです。それでちょっと気が楽になりますね。やろうと思えばスクリーンの後ろに隠れることもできるので。
でも、あれだけ騒々しい環境で集中できますか? ちょっと行き詰まってきた時とかにワイワイやられると、「君たち、ちょっと静かにしてもらえないか」と言いたくなるような気もするんですけど…。
私の場合は、ステージに上がって音楽や観客が生み出す雰囲気の中にいるのが楽しいと感じています。解説者のコメントを聞くのも、観客の声援を聞くのも好きですね。とてもワクワクするような、ハッピーな雰囲気に包まれているんです。もちろんステージに上がる前には不安もありますけど、階段を上がってしまえば、もう最大の難所はクリアしたようなもの。あとはステージにいる気分を味わって、私の作品や個性に興味を持ってくれた人の反応を楽しむだけです。その瞬間に完全に没頭した状態になります。ただ、2020年のオンラインイベントの時は例年よりもストレスを感じましたね。自分のデスクに座ってコードを書くのは刺激が少ないですし、誰かと対戦していても、日常生活に近い感覚が抜けなかったんです。
INKTtober – Mirror (from Shadertoy)
ライブの要素を自分のエネルギーに変えているんですね!素晴らしいです。ちなみに、ステージに上がる前にどんなものを作ろうかと考えておくのですか?
トーナメントのような対戦の前には毎回必ず前もってプランを練っておくようにしています。そうすれば、どんな風に始めたらいいのか、どんな関数が必要になるのか把握できますから。でも同時に、対戦中に即興で変えられる基本的な環境など、いろいろな方法でアレンジできるものを考えておいて、自分と見ている人のために驚きの要素を生み出すことも私にとってはすごく重要ですね。
これからライブコーディングをやってみたい人にとって、とても参考になりそうな考えですね!
Flopineさんは2018年以来Revisionで入賞していますが、デモシーンに出会ったのはいつ、どんなきっかけだったのでしょう?
デモシーンは2016年のRevisionに当時付き合っていた人が連れていってくれたことで知りました。それ以前は、このカルチャーのことをまったく知りませんでした。
行ってみて、、どう思いました?
すぐに夢中になって、私もこのカルチャーに参加したいと思いました。だから、その場で生まれて初めてのデモを作ってエントリーしたんです。X-Menのグループと一緒に会場でPCデモを作りました。最下位でしたが結果はどうでもよくて、1日ちょっとの時間で何かふざけたものを作れたことが嬉しかったし、楽しかったです。
わっ、行動が早い! そこからトーナメントに出場しようと思ったきっかけは何だったのですか?
2016年のRevisionのメイン会場に入った瞬間目にしたのがShader Showdownだったんです。とにかくびっくりして、デモパーティーに連れていってくれた彼に、「いつか私もあのステージに上がるから」と言ったんです。実現したのは、それから2年後ですね!このパーティーの後、週末に友達の家に泊まり込みで行って、レイマーチング(シェーダートーナメント中によく使われる技術で、本来は2Dのみであるフラグメントシェーダー内に3Dを作成するもの)の基本をすべて教えてもらいました。興味もやる気もすごくあったので、その後は自分で試行錯誤しながら学び続けていった感じです。
Photos from Flopine’s Twitter |
すごい・・・。そして見事な有言実行…。今は博士課程でデジタルアートを学んでいるとのことでしたが、Flopineさんは昔からコンピューターやコンピュターグラフィックスに興味があったのですか?現在にいたるまでの経緯を少しお話いただけますか?
私は男が多い家庭で育ち、2人の兄とすごく仲が良かったんです。1人はコンピューターとプログラミングが大好きで、昔はよく夜中までC言語やBASICでプログラミングをしたり、タワーPCを分解してRAMやら何やらを加えたりしていました。もう1人の兄はアートが好きで、きれいな水彩画を描いたり、演劇の舞台に立ったりしていて、美術史や芸術運動に詳しかったんです。2人とも自分の好きなことをよく楽しそうに話していたので、私も興味を持ちました。
それで、たしか私が14か15歳の時だったと思いますが、PCマニアの兄と将来何がしたいか話している時に、私が何気なく「絵を描くのも大好きだし、コンピューターも好き」と言ったんです。そしたら兄がすかさず、「じゃあ、グラフィックデザイナーになればいいよ!」と言ったので、それ以来、そちらの道に進むことになりました。
でも、かなりうまくやってきたんじゃないかと思っています!今、自分を「デジタルアーティスト」と呼べることに大きな誇りを持っています。兄たちと人生や、将来や、何になりたいかを無邪気に話し合っていた頃をよく思い出すんです。
お兄ちゃん、ナイスアシスト!(笑) 現在は、まさにコンピューターとアートが交差する場所にいらっしゃいますもんね! Flopineさんはシェーダーのトーナメントに出場されるだけでなく、Twitchで定期的にシェーダーのコーディングセッションをライブ配信されていますよね。これを始めたきっかけは何だったのですか?
シェーダーコーディングのライブ配信を始めたのは2019年の1月からで、最初は1週間に少なくとも1つシェーダーを作るモチベーションをキープする目的でした。2019年は論文に集中しなければならなかった年で、そのためには芸術面での実践を積むことが不可欠でした。それから、デモシーンではyxとして知られるLunaにインスパイアされたというのもあります。Twitchでシェーダーコーディングのスキルを公開したのは彼女が初めてでしたからね!ただ、配信を続けていくうちに、モチベーションをキープするというより、コミュニティの人たちと集まって、コーディングやコーディングのスタイルを話すことのほうが楽しくなってきたんです。ライブ配信を見に来てくれた人たちから、たくさんのことを学ばせてもらいました。それと同じように、見た人が私の配信から何か学んでくれていたらうれしいですね。
FlopineさんのTwitchセッションより:
HBHS (Have a Beer, Have a Shader) #42 – Plaisir Coupable
コーディングの様子をライブ配信するということは、プロセスをすべて公開するということですよね? 見せてしまっていいんですか…? プログラマーの中にはコードを見せない人もいると聞いたことがありますが…。
ライブ配信中は、シェーダーのすべてのプロセスを公開するようにしています。私の場合、その方法以外は考えられないですね。もちろん、自分の技術だとか、コードやイメージに対する考え方を見せるのは難しいですし、厳しい批評を受ける可能性だってあります。そういった批評は、私みたいな自分にあまり自信のない人間にとっては特に辛いものですが、何より大切なのは、知識と情熱を共有することだと考えています。今の私の知識は、イニゴ・キレスさんやCookie Collectiveの仲間など、多くの人たちが知識を共有し、その知識に誰もがアクセスできるようにしてくれたおかげで身に付いたものです。彼らの存在がなければ、今の私はいません。リアルタイムのデジタルアートのようなコミュニティで、できるだけ多くの人を取り込んで成長させたいなら、オープンソースにするのが良いやり方だと思います。
シェーダートーナメントはライブで行われますし、このTwitchのセッションもライブ配信ですよね。「ライブであること」は、Flopineさんにとって重要なことですか?
論文を書き始めた頃はコードを使ったデジタルアートのパフォーマンスについて書きたかったので、「ライブ」がキーワードでした。でも、だんだん自分のスタイルに磨きをかけたいと思うようになってからは、そこまで重要ではなくなってきました。スタイルに磨きをかけるには、新しい技術を学んで、それを自分で実践していくしかありません。少なくとも、私の場合はそんな感じです。でも、ライブ配信はコミュニティのおかげで今でも楽しいです。あと、ライブ配信のほうが動画を撮ってYouTubeにアップするより楽なんですよね。そういう方法だと編集が必要になるし、自分が喋ってるところを何度も見ないといけなくなるので…。ライブコーディングの腕を上げるには、短期間で大きなタスクを仕上げるよりも、日々の努力が必要になります。できるかどうかわからなくても、思い切って飛び込んで、そこで努力を続けるしかないんです(笑)
あなたのシェーダーが生まれるアトリエを見せていただけますか?どんなプログラムを使っていますか?
よく飲むのは豆乳を入れたカフェオレです。トランプは、数年前にカードを使った技を習ったんです。実際の手品のやり方は知らないんですが、カードをシャッフルしているとリラックスできます。 |
シェーダーのコーディングには複数のプログラムを使っています。
・Shadertoy:オンラインウェブサイト
・Bonzomatic:オフライン用のオープンソースの実行ファイル、Gargajが中心となって開発されたプログラムで、GitHubにあります
・KodeLife:ライブイベント用のコントローラーが必要な時に
・Shader Editor:電車の中でタブレットを使う時に(Android用アプリ)
これだけ選択肢がいろいろあると、可能性が広がる気がしますし、ワクワクします(笑)
プログラムを書く時に、必ず部屋を暗くするとか、ビールを飲むとか、いつも何か決まってしていることはありますか?
コードを書く時は、モチベーションが上がったり、インスピレーションをもらえたりするので、いつも音楽を聞いています。ビールは普段の時は飲まないんですが、ライブ配信やステージでスキルを披露する時には飲みますね。あははは(笑)
なるほど、気持ちを上げるのに役立つわけですね(笑) では、「マイルール」みたいなものはありますか? どんなプロジェクトでも、これだけは必ずやる、やらないといったルールや目標、またはコーディング中に特に気をつけていることなどあれば教えてください。
無意識ですが、自分なりにルールは決めていると思います。私が大好きなアーティストのサスキア・フリーケさんの理論にアートとコードにおけるルールを説明したものがあるんですが、彼女はイメージをコーディングすることは、自分のルールを設定し、それに従って動く、またはそのルールを破ることだと語っています。私の場合、このルールは自分に課す制限事項に近いと思います。たとえば、ここ数週間はコードゴルフをやってみると決めています。コードゴルフはできるだけ少ない文字数でシェーダーを書くことなんですけど、個人的にはTwitterの文字数内に収まるシェーダーのコードを書くのが目標ですね。
ただ、もう少し広い視野で見た場合、コーダーとして大切なのは、作家が母国語を自分流に操るように、自分の構文やコーディングのスタイルを持つことだと思っています。
そういえば、コードが書かれたツイートを見たことがあります。あれもコードゴルフの一種なんですね。ゴルフか、、面白いですね! では、作品を作る上でのヒントやアイデアなどはどんなものから得ていますか?
街で見かけた植物の自然のパターンだったり、レストランの天井のタイルだったり、いろいろなものがヒントになります。TwitterやInstagramといったSNSもそうですね。デジタルアーティストだけでなく、違った分野やスタイルを持ったアーティストをフォローしていて、画家やカメラマン、彫刻家の作品からもインスピレーションをもらっていますね。
パンデミックの影響で昨年から家の中で過ごす時間が増えたと思いますが、こうした状況でモチベーションをキープするのは大変でしたか?フランスはかなり厳しいロックダウンがあったようですが…。
最初は大変でしたが、だんだんと生活の面でも生産性や創造性の面でもバランスが取れるようになった感じです。でも、ロックダウンのせいで、ライブコーディングの対戦やVJなどのライブ体験から切り離されてしまった感覚があるのは確かですね。もちろん、実際の会場で開催できなくなったものをオンラインイベントに切り替えてもらえるのはありがたいですし、その努力にもすごく感謝しています。それに、ヨーロッパまで行かなくてもデモシーンのイベントに参加できるなど、多くの人にとってはチャンスでもあるし、それがデモシーンの存続を後押ししているとは思うんです。でも、個人的には、オンラインのデモパーティーに参加するたびに不満がつのっていく感じがしていて、今はひとりでコードを書きながら、新しいスタイルやテクニックを試すことを楽しんでいます。時には失敗することを自分に許してあげるのも大切ですよね。私はステージやライブ配信などでコーディングの様子を他の人に見せる時には、「すべて完璧にコントロールしなきゃ」と思ってしまうほうなので。
本当に、早くマスクを外して、実際のライブコーディングのステージを見られる日が来てほしいです…!さて、忘れる前に聞いておきたい定番の大切な質問があります。好きなデモ、心に残るデモ、影響を受けたデモ、または人生を変えたデモ…。もちろんシェーダーでも構いません。Flopineさんにとって特別なデモやシェーダーを教えてください。
好きなデモはKewlersとmfxの「1995」(ビデオ)です。あの音楽が頭から離れないのと、作品に登場するエフェクトとシーンが好きですね。
記憶に残るデモは、Ninjadevの「What Are You Syncing About?」(ビデオ)です。ビジュアルと音楽を同期させるという点で、まさにお手本のようなデモだと思います。この作品のスタイルも大好きなんです。
それから、私の人生を変えたシェーダーといえば、間違いなく2016年のRevisionで初めて目にしたShader Showdownです!私を成長させてくれた大事件と言っていいと思います!(笑)
デモシーンにはAmigaやコモドール64と幼少期や思春期を共にした人が多いですが、Flopineさんはそれより後の世代なので、デモシーンのなかでは比較的若い世代になるかと思います。80年代や90年代とは違い、今は作品を公開したり、同じ趣味を持った人たちとコミュニケーションを取るための方法はたくさんありますが、そのなかでもデモシーンを選んだ理由は何だったのでしょう?
私がデモシーンを選んだ理由は、このカルチャーに出会ってすぐに、デモシーナーにすごく親近感を抱いたからです。彼らのコンピューターに対する情熱は輝いて見えましたし、自分の中にも同じような情熱があると気付かせてくれました。それから、このコミュニティから多くのことを学べるとも思いました。ここには、私が今まで出会ったなかでいちばん情熱的なアーティストや技術者がいますから。
私は80年代生まれなのですが、私の育った田舎町の中学校では、「女子だから」という理由でパソコン部に入部できなかったんです。何だそれ?とは思いましたが、当時はそれを仕方ないと思ってしまう環境というか、雰囲気が確かにありました。パソコンは男の子のものと考えられていたんですよね。あれからかなりの時が流れましたが、今はどうなのでしょう?
80年代と比べると、状況ははるかに良くなっていると思います。とは言っても、まだ改善すべき点はありますけどね。
例えば、どんなところですか?
それから、2016年からShader Showdownをチェックしていますが、いままでの出場者を全部合わせても、女性はたったの5人!これだけいろんな場所でライブコーディングが行われているのに、全部で5人っていうのはおかしい。もっともっと新しい女性の出場者が増えていいと思っています。
あなたの足を引っ張ろうとしたり、この世界的なパソコン部から追い出そうとする男子って、結構いましたか、、?
私がここで語れるのは私が体験してきたことだけなので、一般論とは違うかもしれません。でも、全体的に、いつでも協力的で親切に接してもらっているという印象が私にはあります。それは、私のほうが男の子たちより良い成績を取った場合でも同じです(笑)。特にCookie Collectiveを結成するために集まったフランス人のデモシーナーたちはそんな感じですね。彼らのサポートがなければ、今デモシーンの皆さんが知っている「Flopine」は存在しなかったと思います!
[TWITCH] Sous l’ocean (from Shadertoy)
すごく素敵ですね、、そして正直ほっとしました。あなたのやっていることは、他の人に大きな刺激やインスピレーションを与えていると思います。これからも、その素晴らしいスキルを思いっきり私たちに見せつけて、新しい例を作っていってください!
では、Flopineさんにとってデモシーンの魅力とは何でしょう?
私の場合、デモシーンには2つの独特な魅力があると考えています。
1つ目は、理解する目的で低水準言語でプログラミングをすること。このおかげで、自分の作品だけでなく、日々の仕事に対する力も上がりましたし、以前よりうまくコントロールできるようになりました。
2つ目は、昔のハードウェアを使ってプログラミングすることで得られる懐かしい感覚。ゲームボーイ用に初めてアセンブリ言語でプログラムを書いた時、大人になった自分の目を通して、子どもの頃に遊んでいたものと再びつながったような感覚を味わいました。デモシーンに出会ったおかげで、自分のスキルや能力は、あらゆるマシンを遊び場に変えられるものだという新たな視点を得ることができました!
ただ、デモシーンが自分を表現する手段とは言えないです。私にとっては、シェーダーコーディングが自己表現の方法だと思っています。デモシーンは、このシェーダーコーディングがよく使われているコミュニティで、私がシェーダーコーディングについて知るきっかけをくれた場所なんです。だから、これからもずっと、デモシーナーの仲間には感謝の気持ちを持ち続けると思いますね。
将来やってみたいこと、目にしたい変化などはありますか?デモシーンで実現したい夢や目標があれば教えてください。
将来的には、コミュニティにもっと白人以外の人たちも増えたらいいと思いますし、ライブコーディングのバトルなどで、ステージに上がる女性が増えたらいいなと思います。このカルチャーを成長させていきたいなら、もっと多様な人々を受け入れる、安全と感じられる環境を作っていく必要があるんです。
個人的には、デモシーンで達成したい目標というのは特にないですね、、。2020年にRevisionのShader Showdownで優勝して達成できたので、今は大学院の論文に集中しています。2021年の目標は、論文を仕上げて博士号を取ることなんです。書き上がったら、もっとデモを作りたいですけど、それは2022年とかですかね!
楽しみにしていますね!では最後に、デモシーナー、デモファンの方にメッセージをお願いします!
デモシーナーの皆さんへ: これからも自分の情熱を燃やし続けて、シーンを存続させていきましょう!知り合いにも紹介して、もっと参加者を増やしていきましょう。デモシーンは、これからもっと良くなりますよ。コミュニティが団結し、あらゆる個性を尊重できる安全な場所を目指して成長していけば、このカルチャーの勢いをキープして、進化させることができると思っています。
デモファンの皆さんへ: 自分でもデモを作ってみたいと思いながらも、まだ作ってみたことがない人は、今が絶好のチャンスです!便利なツールはたくさんありますし、4Kデモに収めるためのオープンソースの圧縮ツールもあれば、ShadertoyやGLSL Sandboxには驚くほどたくさんのシェーダーコードがあります。それに、デモパーティーによってはアニメーション部門やワイルド部門もあって、リアルタイムではなく事前に作成したアニメーションや、プログラミングのスキルを必要としない作品をエントリーすることもできます。このカルチャーで、あなたの感性を発揮してください。いろいろな感性が集まるほど、シーンが成長して多様性が増していきますから!
それから、水分補給はお忘れなく!
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Flopineさん、論文やらオンラインイベントやらで本当にお忙しいところありがとうございました!
Flopineさんの作品(とコード)は、彼女のShadertoyのページやTwitchのチャンネルで見ることができます。いつも次に配信するライブコーディングセッションの予定をTwitterで告知しているので、ぜひアカウントをフォローしてチェックしてみてください。
Flopineさんが出場したRevisionのShader Showdownは、過去の対戦がすべてYouTubeチャンネルにアーカイブされていますので、対戦がどんな雰囲気で行われているのか見たい方は、2019年以前のビデオ(リンク先は2019年の決勝の様子)をどうぞ。ちなみに、今年のRevisionは4月2~5日です。超もうすぐ!今年もオンラインでの開催になりますので、密を避けた心地良い場所でストリーミングを楽しみましょう!
また、フランス語になりますが、こちらのコンパクト版のセッションでは、Flopineさんがデモシーンとシェーダーについて簡単に説明しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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– そもそも“デモ”ってなに?パソコンの話?と思った方は、まずはこちらのMoleman2のドキュメンタリーをチェック。(この映画の監督、シラードさんのインタビューはこちらでどうぞ。)
#1: 日本のデモシーナー、qさん(nonoil、gorakubuのコーダー)にインタビューは、こちら。
#2: デモシーナー、Gargajさん(Conspiracy、Ümlaüt Design)にインタビューは、こちら。
#3: デモシーナー、Preacherさん(Brainstorm、Traction)にインタビューは、こちら。
#4: デモシーナー、Zavieさん(Ctrl-Alt-Test)にインタビューは、こちら。
#5: デモシーナー、Smashさん(Fairlight)にインタビューは、こちら。
#6: デモシーナー、Gloomさん(Excess、Dead Roman)にインタビューは、こちら。
#7: 日本のデモシーナー、kiokuさん(System K)にインタビューは、こちら。
#8: デモシーナー、kbさん(Farbrausch)にインタビューは、こちら。
#9: デモシーナー、iqさん(RGBA)にインタビューは、こちら。
#10: デモシーナー、Navisさん(Andromeda Software Development)にインタビューは、こちら。
#11: デモシーナー、Pixturさん(Still, LKCC)にインタビューは、こちら。
#12: デモシーナー、Crypticさん(Approximate)にインタビューは、こちら。
#13: 日本のデモシーナー、0x4015(よっしんさん)にインタビューは、こちら。
#14: デモシーナー、Flopine(Cookie Collective)にインタビューは、こちら。
#15:デモシーナー、nobyさん(Epoch、Prismbeings)にインタビューはこちら。
私がデモシーンに興味を持った理由、インタビューを始めた理由は、こちらの記事にまとめてあります。また、デモやデモシーンに関連する投稿はこちらからどうぞ。