日本のデモシーナー、0x4015さんにインタビュー

 
 
 
 
「デモシーナーにインタビュー」へようこそ。今回は、この春にドイツで開催されたデモパーティー「Revision」の4Kカテゴリーで見事優勝された、日本人デモシーナーの0x4015さんをゲストにお迎えしました。
 
最初に少しだけご説明させていただくと、Revisionとはデモシーン最大のコンテストで、毎年イースターの時期にドイツで開催されています。規模の大きなデモパーティーにありがちなゲームの要素(eSportsなど)は一切なく、しっかりとカテゴリー分けされたコンポ(コンテスト)、ライブコーディングバトル、セミナー、ライブ/DJなどなど、どこを切ってもデモシーンというデモシーン純度(ほぼ)100%のイベントです。
 
世界最大のデモパーティーということもあり、エントリーされる作品はどれも本当にハイレベル。そして、出す方も本気なら見る方も本気なので、ここの観客相手に“一発ネタ”のような作品は通じないというのが私の持っている印象です。「笑いが取れても、勢いがあっても、技術が高くないとダメなのよ」的なストイックさを個人的には感じています。さすがはドイツ。
 
そしてもう1つ、0x4015さんが優勝した「4Kカテゴリー」ですが、これは作品のサイズが4KB以内というルールのカテゴリーです。柔道とかで言うところの40キロ級のように、このカテゴリーにエントリーするには、作品を4KB以内に収めなければなりません。Revisionでも競争率の高いカテゴリーの1つです。
 
さて、Revision4Kで優勝することの凄さを少しご理解いただけたでしょうか、、。「あれで4KBなのか!?」という作品自体への驚きももちろんですが、日本人で初めてRevisionで優勝したということもあり、日本だけでなく海外からも「快挙だ!」と賞賛の声があがっているようです。あっぱれですね。
 
さて、えらいこと前置きが長くなりましたが、0x4015さんのインタビューでは、4KB作品の臨場感あふれる制作プロセスに加え、デモとの出会い、そして、海外でデモシーンが黄金期を迎えていたときの日本の状況などを語っていただきました。(これがとても興味深い!) それから、気になるこのお名前の読み方と由来も公開されています!笑
 
では、最後までどうぞお楽しみください!
 
 
(注: デモシーンって何?と思った方は、まずはこちらのページからどうぞ。そしてデモのドキュメンタリーをチェック)
 


まずは簡単に自己紹介をお願いできますか?

 

 

 

0x4015の中の人です。典型的な日本人のオタクです。なんて読むのかは定かではありません。Revisionの会場で、“zero x forty fifteen” と発音されていて、なるほどそう読むのか!って私自身が思ったっていう。
 
 
そうだったんですか(笑) 私もなんて読むのだろうと不思議に思っていました。今年の春はRevision(毎年イースターの時期にドイツで開催されるデモシーン最大規模のパーティー)に参加されたんですよね。いかがでしたか?これまでにも海外のデモパーティーに参加されたことがありますか?
 
海外のデモパーティは初めてでしたよ。とにかく凄いパーティーで、凄い人たちが沢山集結するんですよ。
 
 
日本で開催されるデモパーティー(Tokyo Demo Fest)と何か違いを感じましたか?
 
TDFとの違いは、うーん、音がでかい!会場のコンディションは完璧だったけれど、私のコンディションは時差ぼけで最悪。いろいろやらかしまくりでした。
 
 
そうは言っても、4K部門(サイズが4KB以内の作品部門)で見事優勝されていますよね!おめでとうございます!今年は非常に大混戦だったと聞いていますが、コンポはいかがでしたか?
 
コンポはどれも楽しかったですよ。私がエントリした4K introのカテゴリには、私が良く知ってる大好きなグループが続々エントリしていました。よりによって、彼らと対峙することになろうとは。
 
拙作「final stage」は、沢山の反省点がありました。他の作品はどれもレベルがものすごく高かったから、ああ、やっぱ彼らにはかなわないな、世界は広いなって思ったんですね。私がやってることの足りない部分がよくわかったし、勉強になったって。なので、1位になったときは、びっくりしてしまいました。
 

final stage by 0x4015 (2017)

なるほど…。Revisionに参加してみて、気持ちの変化だとか、何かしてみたいなと思ったことはありますか?
 
会った方々に、もっと日本のことを伝えたかったです。英語がままならないから、全くできませんでしたけどね。
 
 
今回の「final stage」は、「optical circuit」、「2nd stage boss」から続く3部作の完結編のように見えますが、最初から3部作にしようというアイデアがあったのでしょうか?それとも3部ではなく、まだまだ続きますか、、?
 
3部作にするつもりは、最初はなかったんです。「optical circuit」の時に戦闘機を出したんだけれど、彼らは4KBという容量の制約のせいで何もできなかったので、何かさせてあげないといけないなーと思っていたんです。それがきっかけで、連鎖的に「2nd stage boss」「final stage」と続くことになりました。あ、「final stage」で終わりですよ。
 
 
Optical Circuit – 0x4015 (2015)

1
作目、2作目はTokyo Demo Festでリリースされていて、コンポの間すごい盛り上がりだったのを覚えています。3作目の発表の場をRevisionに選んだのはなぜですか?
 
2nd stage boss」がMeteoriksアワード*でノミネートされていて、もし受賞となったら、現地に居ないといけないなって思って、Revisionに行くことにしました。
 
行くからには何か作品をエントリしようと思い、4K introを持って行ったんです。Revisionは、まさに私にとっての Final Stageでしたからね。
 
 
*注: Meteoriksとは、前年の1年間にリリースされたすべてのデモ作品を対象に選考され、監督賞、グラフィック賞、新人賞など、カテゴリーごとに賞を授与するもの。デモシーン内の有志によって2015年よりスタートした。まだ新設のためカテゴリーなど固定されていない部分も多いが、創設以来Revisionで結果発表と表彰式が行われている。
 

2nd stage BOSS by 0x4015 & YET11 (2016)


そうそう、2作目の「2nd stage boss」は、Meteoriks2017Best Direction(監督賞)、Best High-End 4K Intro(ハイエンド4Kイントロ賞)を受賞されていますね。Public Choice(一般ユーザーによる人気投票)にもノミネートされています。こちらもおめでとうございます!レッドカーペットを歩いて最終決戦の場に立った感じですね(笑) 

さて、そもそもなのですが、デモやデモシーンとはどのように出会ったのでしょうか?
 
海外由来のデモを見たのは、1994年頃、知人宅でみたDOSデモが最初でした。「Crystal Dream 2」(ビデオ)と「Second Reality」(ビデオ)等々ですね。そりゃもうびっくりしましたよ。ビデオに録画してもらって、何度も繰り返し観てましたね。
 
実際にデモパーティを体験したのは、それからずーっとあとのTokyo Demo Fest 2012初めてでした。クラックトロから始まって現在に至るまでのデモシーンの経緯は、『Moleman 2 – Demoscene – The Art of the Algorithms(2012) を観させていただいて、それで初めて知りましたので、さらにもっと最近のことです。(日本語字幕ありがとうございました。)
 
 
お役に立てて良かったです、うれしいです(笑) 「Crystal Dream 2」も「Second Reality」も1993年の作品ですから、1994年に見てるってことは、ほぼリアルタイムですよね!デモシーンの黄金期と呼ばれる時代に出会いを果たしていたのですね。
 
いや、これはちょっと難しい問題で、YESともNOとも言えない感じなんです。と言いますのは、当時の日本には、これらのようなデモは無かったけれど、この2つのデモを見る前も日本なりの似たようなモノに囲まれて、過ごしていましたから。
 
 
「似たようなモノ」とは何ですか?
 
ちょっとこのあたりの話をさせてください。当時(1994年頃)、私X68000ユーザーでした。X68000は、Amigaとよく似ているとされる日本のパソコンです。実際のところ、ハードウェア上似ていたのはCPUだけだったけれど、ホビー用途での利用が活発だった点は間違いなくAmigaに似ていました。
 
X68000界隈のことしか詳しくないですが、私の知る限り、その当時日本にはデモパーティはなかったんです。ですが、デモパーティとは形は違うけれど、近い機能を持っているイベントやコンペティションは沢山ありました。
 
どっちかというと、3Dは非リアルタイムの方が活発で、DoGA CGAコンテストという自主制作CGアニメのコンペティションが毎年開催されていました。2000人ぐらい収容できる巨大なホールで開催されていたから、かなりの規模のイベントでした。当時は、X68000の自作レンダラを用いた作品がほとんどでした。後に映画「君の名は」で大ヒットする新海誠さんも、このイベントでデビュー作とされる作品を発表されていて1位をとられています。(動画はこちら
 
また、X68000の製造元であるSHARP主催の「芸術祭」というイベントがありました。このイベントは、技術デモやゲームなど、なんでもエントリ可能なコンペティションでした。これはそのオープニングで流された動画で、ユーザーの手によるX68000自作レンダラで作成されています。(注:オフラインレンダリングされた映像です)
 
リアルタイム3Dの研究も盛んに行われていました。X68000ではAmigaみたいにポリゴン描画にDMAは使えないから、全部CPUでやる必要がありました。描画コストを1 pixelあたり何cycleまで短縮できるかについて、白熱した議論がありました。この時期、雑誌上でX68000のリアルタイム3Dに関する連載記事もありました。確か記事のタイトルは「ハードコア3Dエクスタシー」だったかな。執筆者の方々はのちにPlayStationの「グランツーリスモ」シリーズを立ち上げられています。
 
リアルタイム3Dといえば、X68000の市販ゲームソフトに、ソフトメーカー自身が作成したデモが入っていることがありました。で、各社で内容を競争してるんです。
 
ジオグラフシール(注:リアルタイムレンダリングされた映像です)
 
zoomのデモ(注:同じくリアルタイムレンダリング)
 
海外デモシーンに触発されたものかどうかは、定かではありませんが、やっていることは同じですよね。
 
あとはコミックマーケットですね。年二回開催されている、世界最大規模の自主制作漫画の即売会で、50万人(当時で25万人)のお客さんが来場します。これは入場待機行列の一部をタイムラプス撮影した動画です。40秒経過あたりから、demoishで面白いですよ。
 
このイベントは漫画だけでなく、様々なカテゴリを扱っています。コンピュータのカテゴリがあって、ネットが無い時代、コンピュータ愛好家たちの発表の場として機能していました。イベントの締め切り直前は、いわゆるパーティーコーディングみたいに、みんな徹夜で準備するんですよ。Music diskの配布も活発に行われていましたし、極少数ですが、自作のメガデモを入れたフロッピーディスクを売っている人もいました(奇妙に聞こえるかもしれないけれど、即売会なので、お金を出してデモを買うんです)。ちなみに、昨今のデモシーンで映像素材として良く使われる「Bad Apple」は、コミックマーケット発祥のキャラクタを使った二次創作物なんですよ。等々、話し始めるとキリがないのでこのあたりで。
 
 
うわぁ、、面白いですね!私が勉強不足ってのもありますけど、こういった世界をいま初めて知りました!日本にもデモシーンらしきものが存在してたんですね!
 
海外のデモシーン事情とはかなり異なるけれど、刺激を受ける機会、および刺激を受けたうえで自分なりのアウトプットを発表する機会には恵まれていました。
 
で、ようやく話は最初に戻って質問の答えですが、私にとってのデモ/デモシーン(的なモノ)との出会いは、順序で行くとX68000の技術デモが最初で、さらに特化した世界を垣間見たのは「Crystal Dream 2」や「Second Reality」等のDOSデモが最初、実際のデモパーティを体験したのはTokyo Demo Fest 2012が最初ということになります。
 
 
ありがとうございます。形式は様々でも、もう長い付き合いなんですね…。では、ご自身のデモ作品について少しお話を聞かせてください。0x4015さんは、「2nd stage boss」は例外として、すべてのパートを1人でこなしてらっしゃいますよね。その制作プロセスを知りたいです。最初にスケッチや工程表など、かなり決め込んでから取り掛かりますか?
 
スケッチとか工程表とかを作ることはないです。一個だけ、核になる要素を決めて、それを効果的に見せるには何が必要か、逆引きで考えて肉付けしていきます。これまで作ったデモは4K introばかりなので、この方法で十分でした。
 
私の中で最も印象に残っているのは、「2nd stage boss」の制作で、この時だけはいつもとは違う感じでしたね。また脱線しちゃうと長いのですが、その時のお話をちょっと・・・。
 
2nd stage boss」のサウンド回りは、YET11さんにお願いしたんです。お願い、というよりは、無茶振りという感じでしたが。YET11さんは日本のエロゲーの世界ではとっても有名なクリエータさんなんですよ。shader言語を触るのは初めてだったにもかかわらず、2か月ほどかけて、compute shaderを使った独自のソフトウェアシンセサイザーを作ってくれました。
 
このシンセサイザーは、byte-beatfloat-beatの良いところどりしたような構造になっていて、楽曲データ(song data)は半自動生成することで、容量を節約していました。コードサイズは、圧縮状態でわずか861バイトでした。半自動生成なので、コントロールはきわめて難しく、意図した曲が生成されるとは限りません。生成された結果には無理に逆らわず、時にはこちら側が合わせていかないといけません。YET11さんは相当に苦労されていましたが、それでも凄い音を出してくれたんです。
 
当初、ビジュアルの方がサウンドに負けてしまって、私はあわててビジュアルを強化しました。YET11さんのサウンドも、ノウハウが蓄積されるにつれて強化されていき、ビジュアルvsサウンドの競争みたいになっていきました。で、ついに容量が足りなくなって大騒ぎに。
 
それでもなんとかminify(圧縮)してギリギリ4KBに収めてもう完成だと思った数日後、YET11さんが、またサウンドを更新してきたんですよ。「手が、手が勝手にうごいてしまったぁぁ!」とか言って。そのバージョンには、効果音が入ってました。さすが絶対に妥協はしない方だなと思ったんですが、もちろん容量オーバーでした。これは絶対に4KBに入らないと思ったのですが、4K introで効果音は前例がなかったので、minifyをめちゃくちゃ頑張ってどうにか入れ込みました。
 
最終的に、YET11さんのサウンドは、バラバラに存在していたビジュアルエフェクト群に対して、取りまとめ役になっていました。日本語でいうところの、「団子に通す串」のような存在です。このデモは、サウンドにディレクションされながら作られたんです。

YET11さんとのコラボレーションの様子 (c) 0x4015さん

 

おぉ、、お互いに磨き合うという、コラボレーションの理想形という感じですね!ところで、これまでリリースされた作品はすべて4Kのようですが、これには何か理由がありますか?
 
プライベートでコードを書いている時間があまりないんですよ。4K introだったら、あっという間に容量制限に到達して、そこで開発作業は終了しますから、私にとっては都合のよいレギュレーションだったんです。
 
サイズ無制限のカテゴリでは、私の持てるなけなしの労力を全て投じても、ちゃんとしたものは作れないし、際限なく作り込もうとして結局完成しないのは目に見えていますから。
 
 
なるほど…。あの、もしよろしければ作業の現場をちらりと見せていただけますでしょうか、、。
 
(c) 0x4015さん
映っているものを解説します。
 
・ゲームソフト
 PS4 ソフト「バトルガレッガ」、ファミコンソフト「烈火」、ドリームキャストのソフト「斑鳩」、 いずれもガチ勢必携のシューティングゲーム
 
・自作ジョイスティック
 シューティングゲームを遊ぶため、市販のものでは満足できず、自作したものです。
 
 チップチューンの本ですが、恐らく日本で最もデモシーンについて詳しく書かれた本でもあります。座右の書になっています。
 
ZAURUS
 通勤電車で 4K introのコーディングに実際に使っているものです。スシ詰め状態でもコードが書けます。
 
 
あのデモはザウルスで作られていたのか…!X68000といい、ザウルスといい、目のつけどころがシャープな製品ですね!(笑)では、どんなプログラム/ツールを使ってデモを制作していますか?
 
実行ファイルの圧縮はcrinklerを使います。crinklerはとても素晴らしいツールで、これなくしては、4Kがお手軽なカテゴリだなんて絶対に言えないですね。
 
デモツールのようなものは何も使っていなくて、レガシーなテキストエディタのみで作成しています。コードはすべてハードコードしていて、再利用されることはありません。似たようなエフェクトでも、毎回フルスクラッチで実装し直しています。
 
 
デモを制作するうえで、自分のなかで決めているルールや、特に気をつけていることなどありますか?
 
先ほどのツールの話の続きになりますが、毎回フルスクラッチでハードコードする、ということが、私の中での決め事であり、モチベーションにもなっています。
 
プログラマの作業スタイルには大きく2通りあります。ハードコードを避けて、再利用性を高め手堅く進めるスタイルと、ハードコードを恐れず、使い捨ての殴り書きで進めるスタイルです。どちらがより良いアウトプットが出せるのかは、よく議論の的になります。両方のスタイルを使い分けられるのが、恐らく一番良いと思います。
 
私はどちらかというと、ハードコードを避ける側のプログラマです。なので、時には普段とは真逆のスタイルでモノを作ってみることが必要で、デモを作成するときは、ハードコード側に思いっきり切り替えることにしています。
 
 
私はプログラミングをしない人間ですが、この“プログラミングのスタイルを変える”っていう考えには、興味をかきたてられますね!そういえば、0x4015さんは、ご自身のウェブでも自主制作ゲームを公開されていますよね。Tokyo Demo FestにはFamily Basicも持参されていました。素朴な疑問なのですが、ゲーム制作とデモ制作で共通している点などはありますか?
 
私は昔からシューティングゲーム(shoot’em up)しか遊ばないし作らないから、デモ作ってもシューティングゲームになってしまいます。これはもう根幹って感じで、共通点ではないかもしれないですね。
 
そうそう、共通点といえば、Family BasicRAM領域が4KBしかなかったんですよ。ゲーム制作でもデモ制作でも、困難な制限があった方が熱中してしまうってのはあるかも。

Family Basic (Wikipediaより)


知らない方向けに補足しますと、Family Basicってのは、ファミコンに接続してBASIC言語でゲームが制作可能なツールで、任天堂から日本でのみ販売された製品です。私は10代のころ、これをずーっと触っていました。Family Basicのカートリッジには、ドラクエIIIのセーブデータ保存用に使われているバッテリーバックアップRAMと同じものが乗っていて、この中にプログラムを書きます。とにかく狭いんです。
 
当時私は、この4KBの領域に1.5KBの軽量自作アセンブラを実装して、BASICの中間コードをダイレクトにネイティブコードに変換するセルフ開発環境を作っていました。そういう若いころの貴重な集中力は、もっと建設的なことに使えばいいのにって思わなくもないですが。
 
もし当時の私が、30年後にまだ4KB制限でコード書いているって知ったら、なんて思うでしょうね。そっちこそ、もっと建設的に時間使えよって言われるかな。
 
 
ははは、、、将来ドイツのデモパーティーに行くぞ、っていうのも伝えたほうがいいかもですね!(笑) ちなみに私はファミコンで遊んでた世代ですが、Family Basicの存在はTokyo Demo Festで初めて知りました。
 
Family Basicに便乗して言及すると、当時、プログラミング雑誌に載っていたFamily Basicのプログラムの一行目に、必ずこう書いてあるんですよ。
 
POKE &H4015,15
 
このコードがやっていることは、アドレス0x4015にマップされているサウンドイネーブルレジスタの4つのビットを1にしてるだけなんですが、最初これの意味が全く分かりませんでした。
 
これを理解するには、16進数、2進数とビットの関係、メモリマップドI/O、ファミコンのサウンド機能の仕様、等々について知る必要がありますので、かなり敷居が高いです。その雑誌の表紙には毎号、「わかる!動かせる!プログラムが組める雑誌」って書いてあったんですけれどね。1行目から全くわからないんですよ。初めて遭遇したマジックナンバーが 0x4015 だったんです。
 
 
あっ!お名前の由来は、このマジックナンバーだったんですね!つながってますねぇ~!(笑) ちなみに、10代の頃にFamily Basicを愛用していたとのことですが、いつ、どんなきっかけでプログラミングをするようになったのですか?
 
小さいころ(7歳ぐらい、1980年頃)から、近所の駄菓子屋ゲーセンで沢山のアーケードゲームを見てきました。とにかくゲームは隅々まで遊びました。だんだん内部の仕組みの方に興味がわいていって、そして、いつかゲームを作る側になりたいと思うようになりました。
 
はじめてパソコンが自宅にやってきたのは、14歳のころでした。高価なパソコンは買えないし、まずはこれで妥協するかと、友人からファミリーベーシックを借りてきたんです。当初の印象はすごく悪かったんですが、アセンブラに手を染めたあたりから、これまでゲームを観察して知っていたことが実際に試せるようになって、のめり込んで行きました。
 
同時期にMSX等も触ってみたんですが、ファミリーベーシックの方が自分には馴染む点が多く、環境を乗り換えることはしませんでした。で、そのまま6年近く触り続けることになりました。
 
6年は、さすがにちょっと長すぎですよね。でも、その頃の自分にとっては、まともにスプライトを表示できることが何より重要だったんです。日本のホビーパソコンでそれを満たしてくれるものは、ファミリーベーシック以降だと、X68000まで待たなければなりませんでしたから。
 
 
いやぁ、、「とりあえず」で始めたものが6年になるとは、、きっと相性が良かったんでしょうね! では、そろそろ定番の質問にいきたいと思います。好きなデモ、心に残るデモ、影響を受けたデモ、または人生を変えたデモ…。0x4015さんにとって特別なデモを教えてください。
 
いわゆる定番作品は、どれも好きですよ。あれを挙げるならこれも挙げないと・・・ってエンドレスになるから3つだけ。
 
 
多くのX68000ユーザーがAmigaをライバル視していましたので、このデモを観て、みんな衝撃を受けました。当時、仲間内で、X68000でこれが作れるか?自分たちに足りないのは何か?考えました。結論としては次の様なものが必要だろうと。
 
まず第一に、洗練されたDMAアーキテクチャ。X68000DMAはグラフィクス向けではありませんでしたから。
第二に、周波数可変かつ多チャンネル出力可能なPCM再生デバイス。X68000のサウンドデバイスは、周波数固定のADPCMが1チャンネルしか再生できませんでしたので。
そして第三に、映像素材になってくれそうなガールフレンド。いろいろ足りませんでした。
 
 
 
fr-08: .the .productの興奮冷めやらぬ頃にリリースされたThe Partyinvitation
demo
(近日開催されるデモパーティーを告知するデモのこと)。これを観て、「よし、よくわからんけど、デモパーティなるものに行ってみよう!」と思ったのですが、旅行にかかる費用を調べてみたら結構な額が必要らしく、休暇も取れないし断念。「まあいいやいつか行けるかも」とか悠長なことを言っていたらThe Party自体が終了してしまったという。モヤモヤを引きずって現在に至ります。行けなかったパーティのinvitation demoを観ていると、哀愁に浸ることができます。
 
それから16年後の今年、Revision party 2017に行こうか迷っているとき、このinvitation demoのことを思い出して、今度こそはと行くことに決めました。
 
 
 
このデモが発表されたとき、Tokyo Demo Fest会場にいたみんなが腹がよじれるぐらい笑いました。娘(当時4才)がこのデモをとても気に入って、何度も観たいというから毎日見せていたんです。娘はこのデモのことを「へんなひよこ」って呼んでいて、絵を描いていたり、微笑ましかったのですが、幼稚園のお絵かきでもガングリオンを描き始めてしまい、これはまずいなと思ったら、案の定妻に怒られました。
 
 
リリースされた時期、内容ともに幅の広いセレクションですね!(笑) ありがとうございます。
では、大きな質問をもうひとつ。0x4015さんにとって、デモやデモシーンとはどんなものですか?
 
私にとってのデモというと、根底にあるのはAmigaに対する憧れかもしれません。日本ではAmigaを所有している人はとても少なかったし、情報も無かったので、最も活発だった時期のAmigaをリアルタイムに体験することができなかったんです。Amigaのような、ハードウェアのスペックが固定されている環境での競争は、相当に熾烈なものだったろうなと。そこに参加して居たかったですね。
 
どんなにあがいても、当時の状況を実体験することはできないわけです。悪あがきでもいいから、ちょっとでも近づいた気分になりたくて、デモを作っているってのはあるかもしれません。
 
似たような思いを抱いている、日本人のデモ愛好家は多いと思います。私を含め彼らにとって、デモと言えばAmigaの「メガデモ」です。本来は「メガデモ」という呼称は、フロッピーディスク1枚に収まるデモを指すものですが、デモの容量に関わらず意図的に「メガデモ」と呼ぶ日本人は多いです。私も、4K introのことを「4キロバイトのメガデモとか呼んだりしますよ。「メガデモ」という呼称には、Amigaのデモ文化に対する憧れが込められているんですよ。
 
 
なるほど…。Tokyo Demo Festの会場やコンポ中に聞いたAmigaコールには、そういう意味も込められていたのですね。あの当時、Amigaが日本で普及していたらどうなっていたのかなとも思います。
 
さて、今後について伺いたいのですが、作ってみたい作品や、デモシーン関連でやってみたい目標などはありますか?
 
全く異なるスタイルのデモを作りたいです。4K intro以外のカテゴリもやってみたいですね。
 
もう一つあります、重要なのが。それはAmiga vs X68000の決着をつけること。
 
 
では最後に、デモシーナー、デモファンの方にメッセージをお願いします!
 
X68000000000000000000000000000000000!!!!!
 
 Amigaaaaaa!!!! 的なニュアンスを込めて)
 
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0x4015さん、本当にお忙しいところを、快くそして丁寧にご対応いただきありがとうございました!
 
0x4015さんのこれまでの作品は、Pouetのページから確認できます。ご興味を持たれた方は、YouTubeだけでなく、ぜひ実行ファイルをダウンロードして4KBであることを実際に確認してみてくださいね。
 
ちなみに、Pouet(デモシーン最大のポータルサイト)からデモ作品をダウンロードして実行ファイルを開こうとすると、アンチウイルスソフトが起動してファイルごとサクッと削除されることがありますが(笑)、危険はないのでご安心ください。(本物のデモシーナーは自分の作品に悪玉菌を仕込むなんてことしないだろうし、そもそもサイズ制限があるから入らないと思う…笑)
 
また、0x4015さんのホームページでは、自主制作のゲームソフトやFamily Basic関連などの記事を公開されています。サイトのデザインからもガチな雰囲気が伝わってきますので(笑)、さらに掘りたい方は要チェックです。
 
[UPDATE: 2021/02/05] 0x4015さん(通称よっしんさん)が、「90年代の日本のデモシーン/それに類似したもの」を記事としてまとめていらっしゃいます。これはわかりやすい!
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
 
 
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– そもそもデモってなに?パソコンの話?と思った方は、まずはこちらのMoleman2のドキュメンタリーをチェック。(この映画の監督、シラードさんのインタビューはこちらでどうぞ。)

  #1: 日本のデモシーナー、qさん(nonoilgorakubuのコーダー)にインタビューは、こちら

  #2: デモシーナー、Gargajさん(ConspiracyÜmlaüt Design)にインタビューは、こちら

  #3: デモシーナー、Preacherさん(BrainstormTraction)にインタビューは、こちら

  #4: デモシーナー、Zavieさん(Ctrl-Alt-Test)にインタビューは、こちら

  #5: デモシーナー、Smashさん(Fairlight)にインタビューは、こちら

  #6: デモシーナー、Gloomさん(ExcessDead Roman)にインタビューは、こちら

  #7: 日本のデモシーナー、kiokuさん(System K)にインタビューは、こちら

  #8: デモシーナー、kbさん(Farbrausch)にインタビューは、こちら

  #9: デモシーナー、iqさん(RGBA)にインタビューは、こちら

#10: デモシーナー、Navisさん(Andromeda Software Development)にインタビューは、こちら

#11: デモシーナー、Pixturさん(Still, LKCC)にインタビューは、こちら

#12: デモシーナー、Crypticさん(Approximate)にインタビューは、こちら

#13: 日本のデモシーナー、0x4015(よっしんさん)にインタビューは、こちら

#14: デモシーナー、FlopineCookie Collective)にインタビューは、こちら

#15:デモシーナー、nobyさん(Epoch、Prismbeings)にインタビューはこちら

 

私がデモシーンに興味を持った理由、インタビューを始めた理由は、こちらの記事にまとめてあります。また、デモやデモシーンに関連する投稿はこちらからどうぞ。

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