Assembly Summer 2014に行ってきました



7月末から8月にかけて開催されたAssembly Summer 2014に行ってきました!

 
 
Assembly(アセンブリー)は、フィンランドのヘルシンキで1992年から毎年開催されている世界最大級のデモパーティーです。近年はデモ以外の要素(ゲームとか)がかなり増えてはいるものの、伝統と伝説を持つ場所として、今でもデモシーンの中では特別な存在となっているようです。よくWikipediaなどの「デモパーティー」の欄でAssemblyの写真が例に使われています。(ちなみにAssembly Winterという冬バージョンもあるのですが、こちらはデモシーンとは一切関係がないゲームのイベントとなっています。)
 
 
* 「デモパーティーって何なの?」と疑問に思った方には、こちらの記事をおすすめします。コンピュータプログラミングの技術を使って作る作品「デモ」のコンテストのことです。
 
Assemblyと言えば、1993年にフィンランドのデモグループFuture Crewの大名作Second Reality』がリリースされたパーティーでもあります。私がデモシーンを知るきっかけになったのは90年代に発行されていたメールマガジンだったので(リアルタイムで読んでいたわけではなく10年後ぐらいに読んでるわけですが、、)当時のAssemblyといえば、もうそれは大変な騒ぎ。Assemblyこそが、ザ・デモパーティーで、ここで優勝して故郷に錦を飾ってやろう的な勢いがそこかしこにあふれていました。
 
 
ヨーロッパのデモシーン黄金期が終了した後でも、このAssemblyを聖地のように見る考えは残っているようで、歴代のリリース作品を見ると、デモグループが自分たちのとっておきを発表する場所だということが感じ取れます。
 
メールマガジンを読んでいた頃から漠然といつかは行って見てみたいなあと思っていたのですが、デモシーナーにインタビューさせていただく機会もあったし、Assemblyがゲームのイベントに変わってしまう前に何としても見なきゃ、、、と、今年ついに決行しました。(まぁ、フィンランドと言えばムーミンの国だし、Assemblyでがっかりすることがあっても、ムーミンと遊んで帰ってこよーんと思ったりしつつ…)
 
ヘルシンキに向かう飛行機の中で少し予習、、というか80年代を生きた私にとっては復習。
私はFinnairを利用しましたが、夏の北欧(8月~)はハイシーズンとなるので、
行こうと思っている方はなるべく早めに航空券を予約されることをおすすめします。
 
 
 
こちらが今年から場所が移ったAssemblyの会場「Messukeskus(メッスケスクス)」の入り口です。普段は展示会やシンポジウムなどが行われる場所だそうです。市の中心部からトラムで20分強くらいでした(会場の目の前で降りられるので便利でした)。会場の横はビジネスカレッジになっていて、隣にはホテルもあります。あと、歩いて5分程度の場所に、ちょっとしたコンビニやファストフード店などが入っている駅もありました。
 
チケットカウンターに行ってスタッフにいきなり言われた一言は、「オールドスクールの方ですよね?」 ・・・絶句。げぇええ、私ってそんなに年に見えますかね、たしかに日本ではいつも10ぐらい上に見られるんですけどフィンランドでもそうですか、、と軽くショックを受けて入場。でも、入ってみるとその言葉の意味が瞬時に分かる(笑) 本当に来場者の年齢層が低い!周りを見渡すと、、私が保護者といっても誰も疑わないくらい若い人がたくさん!これはすごく意外でした。
 
 
 
入り口では持ち物検査があります。フリスクのケースまでチェックされたので、間違っても変なものや怪しいものを持ち込まないように…。それと、これも意外かもしれませんが、Assemblyの会場はアルコール禁止です。
 
 
 
 
入り口を入ったあとの様子。最初にゲームのエリアがあって、奥がメインホールになります。会場内のお店はほとんど開いていないので、みんなご飯を外で買ってきたりしていました。会場の外にピザ屋さんがあったみたい。(写真でもピザの箱を持ってる人がいますよね).
 
 
 
こちらはゲームのエリア。eSportsのイベントが行われていたり、企業ブースではゲームで遊べるようになっていました。昔のアーケードゲームマシンや、大きなソファーがあって、ちょっと昼寝ができるコーナーもありました。(なんかものすごく機械の匂いがした、、)

 
 
初めて見るeSportsの現場。ユニフォームに観客に、、ほんとにスポーツみたい!
 
 
(左) あなたオールドスクールですね!と言われても仕方ないなと思った瞬間のひとつ。

(右) Kajak、、だったと思うのですが、ゲーム開発をしている企業のブースで、今話題のOculus Riftを使ったデモを見せてもらいました(ジェットコースターに乗ってるような映像)。おぉ、これがVR・・・。

 
 
 
セミナーが行われる場所は少し離れた静かな場所にありました。
 
 
 
 
そしてこれがメイン会場。どこまでも続くコンピューターの川・・・
 
 
もちろんAssemblyに来られたことはものすごく嬉しかったのですが、「もうデモパーティーじゃないんだ、、」とがっかりしたのが正直な最初の感想です。会場の端から端まで歩き回って来場者やPCのスクリーンをチェックしてみたのですが、とにかく大多数がMMORPGで遊ぶ若い人たちで、、。もっとみんな黒い画面でゴリゴリ何かを打ち込んでいるのかと想像していたので、これはゲームのイベントだったのね、、と寂しく思いました。別にゲームのイベント自体が嫌だと言ってるわけでは全くないんですが、、私は「デモパーティーとしてのAssembly」を楽しみにして来たので、、、。
 
 
デモやゲームのイベントには女子が少ないと言われていますが、Assemblyにはたくさん女の子が来ていました。こんなふうにガーリーワールドを展開している子もいてカワイイ!
 
Assemblyの会場にはTokyo Demo Festでお友達になったWkterくんが来ていたので、彼の友達がお留守の間にテーブル席に座らせてもらい、しばし座席からの視点でAssemblyを体験・・・。(基本的に「なぜデモシーンがないのだ!」と嘆いて終了、、ごめん)

会場のスクリーンには、ときどき「名作」と呼ばれるデモが上映されていました。
これは2011年にAssemblyで優勝したASDの『Spin』という作品。
 
さて、そんなWkterくんからAssemblyに参加される方に向けてのアドバイスをいただきました。
 
–      現時点ではAssemblyはデモパーティーというよりLANパーティーになっているので、ゲーマーと仲良くなるのは難しいかもしれません。信頼できる友達と一緒に参加すれば安心だと思いますし、他の人と話しかけるきっかけもできて、もっとパーティーを楽しめると思います。
 
–      それと、来場者の大部分はデモシーンにあまり興味のないゲーマーなので、ゲームコミュニティで今は何がトレンドなのかチェックしておくと良いかもしれません。
 
–      オールドスクールのテーブルをチェックしましょう。“クールな人たち”は、ここに集まっています(笑)
 
 
それと、Assemblyのスリーピングエリアはかなり冷えるとのことなので、会場で眠ろうと考えている人は、ブランケットなどを用意するといいかもしれません。(普通にしてても結構会場は肌寒かったです)
 
 
そんなわけで実は相当ガッカリしていた私ですが、コンポの時間が近づくにつれ、会場の様子が変わっていきます。
 
 
1kコンポのスクリーン。美しい!


遅い時間になると、どこからともなく年齢層が高めの人が(笑)現れはじめ、オールドスクールのエリアとスクリーンの前に人が集まってきていました。ここでようやく、あの人見たことある!あの人何か作ってる!という、私の想像していたデモパーティーの光景が見られたのでした・・。
 
そして迎えたデモコンポ・・・。
 
 
コンポが始まる前になると、スクリーンに「PCの画面と音を消すように!」と何度となく指示が表示されるのですが、1K4Kとコンポが進むごとに会場がどんどん静かになっていき、最後のDemo Compoの時には本当に会場が暗く、静かになっていました。ゲーマーに囲まれてテーブル席にいた時には、周りはスクリーンにもステージにも気を留めていなかったので、正直これには驚きました。スクリーン前に設置された500席はあっという間に埋まり、座席の前にあるスペースにもぎっしりと人が座っていました。Assemblyのルーツはデモコンポ、を再確認した瞬間でもありました。伝統に敬意を払う姿勢に、とても感激。(こういうのが続くといいな・・)
 
 
というか、、あまりにも会場の興奮と緊張感がライブに伝わってきて、作品を出すわけでもないのに、ものっすごく私も緊張して、気分が悪くなるほどでした・・・。
 
 
デモコンポを見た感想としては、「すごく楽しかった」ではあまりにも生ぬるく、「ショックを受けた」と言ったほうが的確かもしれません。もちろんずっと見たかったコンポが見られてとても嬉しかったのですが、それ以上にとにかく圧倒されてしまって、立ち上がるのにも少し時間がかかりました・・・。 月並みな表現ですが、大きなスクリーンとスピーカーがあれほどの違いを生むなんて、、。床がビートではねるのを体感できますし、スクリーンに映るエフェクトはダイナミックすぎて怖いくらいでした・・・。それに、あれだけの観客の存在感と生々しい反応・・・。

 
今回のAssembly Demo Compoの優勝作品。
“Black And White Lies” by One Studio Off (DL)

 

Assemblyでリリースされた作品は、Assemblyのウェブサイトからチェックできます。もちろんPouetから実際のファイルをダウンロードして、お手持ちのPCで生成も可能です。ゲームコンポにも面白いものがあったのでそちらもぜひ。
 
デモコンポが終わったあとは、かなりこみあげてくるような感情的な気分になっていたのですが、Sir Garbagetruckさんに諭され連れられ、気が付けばCompo Studioの会場に!笑 (Sir Garbagetruckさんは、SceneSat RadioDJとしてもお馴染みのデモシーンアイコンの1人です。Moleman2にも出ていましたね。青いマフラーのサンタさんみたいな風貌の方です)
 
 
 
Assemblyでは、各コンポのあとにシーナーをスタジオに招いて「コンポスタジオ」というトーク番組を放送しています。デモシーナーの感想をきいたり、トリビアを得るには最適の場所・・ 過去にはここでFLTASDがコンポじゃなくて腕相撲で勝負したりしています(笑) (AssemblyのウェブサイトYouTubeチャネルでチェックできます)

カメラの後ろにたくさんの人がいるのが見えますか?
ものすごい数の大人が関わっていました!視聴者として感謝!
ショックの後だったのと、カメラにびびって緊張していたので自分が何を言ったのかは全く覚えていませんが、他のゲストの方のシャープなコメントを楽しく聞かせていただきました。とくに、ホストのFrankyさんとTruckさんには、ものすごくフォローしていただきました、、、ありがとうございました・・・。(ちなみに、この2人はArrogant BastardsというコンビでSceneSatのラジオ番組をやっています。)
 

 

コンポが終わったあとに、ずっと考えていたこと。
それは、Assemblyのスクリーンの前で体験したことは、コンサートや劇場に行った時の感じと似ているようで、それでいて決定的に違うものがあるということ。おそらくそれは、作者と観客の距離がものすごく近く、作品への批評がものすごく直接的であるということ。
だからこそ、コンポはスリリングな体験なわけですが、、これは作成者の視点から見た場合、かなりのリスクが伴うことになります。、、つまり、長い時間を費やして作ったものが、あの臨場感のなか、あれだけの人からブーイングを受けたら・・、自信もプライドもクラッシュアイスのように打ち砕かれてしまう恐怖もあるわけです。(批判をなんとも思わない人もいると思いますが、ほとんどの人はそうじゃないと思うので、、)
 
デモシーンという場所は、作品を出せば必ず批評されます。しかもかなりキツ目の批評・・・(Pouetを見ると一目瞭然)。でも、これはデモシーンの文化の一部なんだと思います。ただ、、、こうして実際のコンポであれだけの反応に触れると、、「もし私が作品をリリースしていたら、あの状況をどうやって乗り切ればいいのだろう、、」ということを考えずにはいられませんでした。
 
 
で、しばらく考えてみた結果、私なりに行き着いたのは、「あの嵐のような状況で支えになるのは、自分にとって意味のあることをやった、または、自分の精一杯をつくした、という確信なんじゃないか」ということです。観客を喜ばせようと思って作ったり、誰かから認めてもらおうとすれば、成功すればバンザイですが、失敗すればかなり傷つきます・・。(まぁ、でも、TruckさんがDemo Compo Studioでも話していたように、作品を作れば必ず誰かが気に入ってくれますからご安心を。本当にそうだと思います。どうしょうもないと思っても、その部屋の中ではボロクソに叩かれても、この世の中はうまいことできているようなので笑、必ず誰かが良いと思ってくれます・・)
 
 
もちろん多少の客観性を持つことは大事だと思いますが、それと同時に、自分の表現したい世界を守る強さも必要ですよね。(これはデモだけじゃなくて、音楽もダンスも書くことも、自己表現に関するすべてについて言えることだと思いますが、、) それに、デモシーンはビジネスの場じゃなくて、壮大なる遊びの場。誰かの時間を5分間もらえるなら、思いっきり自分を見せつけてやればいいのかな・・・。
 
 
 
デモシーンは、自己表現とスキルの向上と、趣味や関心を同じくする人たちの交流の場だと思っていましたが、こうした批評を乗り越えて、人間的にも、表現者としても成長するための場所なんだなあと感じました。こうして作品を出すことは勇気のいることですし、改めてすごいなぁと感じました。Assemblyがデモシーナーにとって特別な意味を持つ、というのも理解できた気がします・・・。それにものすごく、私自身が勇気づけられました。
あー、やっぱり来てよかったなー!笑
 
まとめと伝言
 
・     Assemblyにデモパーティーとして参加しようと考えている方は、「Oldschool」のエリアの座席を確保することを強くおすすめします。
 
・     今年からリモートエントリーの受付を開始したそうです。ヘルシンキまでは行けないけれど、Assemblyのレベルに挑戦したいという方はぜひご検討を。
 

・     何度かSceneSatの名前がでていますが、これはデモシーン関連の番組を流すストリーミングラジオで、デモパーティーの会場からライブ放送なんかも行っています。番組内ではデモシーン関連(というのか)の人が作った音楽が流れるのですが、DJを務めるTruckさんより、「日本のミュージシャンでSceneSatで作品を流したいという人がいれば大歓迎します!」との伝言を預かりました。ブロークンな英語でも大丈夫そうなので、関心ある方はぜひWebTwitterから連絡をとってみてください。

 
 
長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!
 
 

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